第7回むつき庵はいせつケア実践報告会 報告07

「ゆりりんを使用し自立に取り組んだ事例」

大阪市立弘済院附属病院 1病棟 原口 岳子さん、玉城 佳代子さん

|はじめに

加齢とともに現れる症状の一つに排尿障害がある。加えて個人が抱える排尿障害の問題は様々であり、認知症患者は尿意があっても自らうまく訴えることができないことが多い。おむつの装着を強いられていることが多く結果的に尿意はあってもおむつ内に排尿させてしまっていたり、定期的におむつの点検をしたりトイレ誘導したりしている。認知症患者の尊厳を守る排泄ケアを行いたいと考え、ゆりりんを使用し患者個々の排尿パターンを確認し排泄の自立に取り組んだ事例について報告する。

|症例

79歳男性アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・慢性硬膜下血腫術後。HDR-S 0点 MMSE 1点 要介護5 紙おむつ・尿とりパッド使用。尿意の訴えなし。夜間放尿、おむつ外しあり。おむつ交換は3人介助。排尿時「しょんべん」と言っていた。妻の希望はトイレで排尿できる。

|結果と考察

ゆりりんで定時測定を試みたが体動が激しくデータをとることができず1時間ごとに仰臥位か座位での残尿測定を行った。その結果残尿量は50cc以下であり19時から翌7時まで約1200ml、7時から19時まで700〜900ml排尿があることがわかり、排尿のタイミングも6時・10時・14時・20時位であることがわかった。
失禁のタイプは機能性尿失禁と判断し、援助することで尿失禁は改善するのではないかと考えた。排尿誘導時は「しょんべん」という言葉を使うことで排尿する事が伝わりトイレでの排尿回数が増えた。

認知症は言語・非言語コミュニケーションによる意志の疎通が困難であることから、家族から普段どのようにコミュニケーションをとっていたか、排泄誘導時の声掛けや排泄の援助方法、日常生活の状況などの情報収集が重要であり、それらを取り入れることは、今まで行っていた排泄という行為を体が思い出すきっかけになることが分かった。

夜間尿量が多く失禁による病衣・リネン類の汚染に対しては尿量に合わせたおむつの種類の選択と当て方を工夫することで汚染は減少し、睡眠を妨げる援助がなくなった。ゆりりんは下腹部に装着することで、超音波にて24時間にわたり膀胱内の尿量を定期的に測定できるため、意思疎通の図れない患者や尿意を訴えない患者の排尿記録に代用できると言われているが、その問題として①装着中の患者の体位など細かに記録しておく必要があること②認知症の患者はプローブを外してしまうことが多い等あげられている。

今回の症例でも排泄前後に同じ体位を取り測定することが困難であったりプローブを外してしまったりすることがあったが残尿測定を行うことで排尿誘導時間を決めることができた。

第7回むつき庵はいせつケア実践報告会-発表者の皆様