第14回むつき庵はいせつケア実践報告会

「第14回むつき庵はいせつケア実践報告会」大勢の方にご参加いただき開催しました

 11月9日にラボール京都2階ホールにて、「第14回むつき庵はいせつケア実践報告会」を開催しました。まだまだコロナ禍の先行きは見えませんが、丁寧な感染対策をとって開催することが出来ました。今回は、当日の参加者は講演・報告者スタッフも含めまして総勢107名の方々がお越しくださいました。


 第14回むつき庵はいせつケア大賞には「独居男性の夜間における排泄ケアの取り組み~布パンツ導入がもたらした心豊かな暮らし~」と題して発表されました医療法人結 結ファミリークリニック内 ミニむつき庵 楽桃 看護師 丹羽幸貴実さんが受賞されました。ミニむつき庵楽桃を開設し在宅の訪問相談を行うなか、おむつからの尿漏れに悩む男性に的確な助言をされたこと、その助言によりおむつからの尿漏れのみならず皮膚トラブルが軽減したこと、そして男性が自分でトイレにいきたいという目標をもつようになったこと、表情も変わりその人らしい生活意欲が生まれたこと、このような実践を重ねるミニむつき庵は地域の宝と言えます。この素晴らしい活動に対して最も高い評価が贈られました。第14回むつき庵はいせつケア特別賞には「病をもつ者の立場から学んだ介護の本質」と題してご本人闘病中のため職場の方3人が代理報告された特別養護老人ホーム くすのき苑 介護福祉士 光野智美さんが受賞されました。自らの病の経験から小さな声かけの重要性に気づき、何より人としての関わりこそが大切と感じたこと、人は誰も多くの人に支えられながら生きていきます。これらは復職されるときの大きな糧となるものとして評価されました。


 発表された7組のいずれの実践報告も素晴らしく、回を重ねるごとに発表される内容のレベルが向上していますことをあらためて実感するものです。その人が望む暮らしや排せつケアとは・・・それにより本人の思いにも深く触れ合われた実践。排泄によるトラブル改善に向けて~両面吸収シートの併用の取り組み。赤ちゃんの動きから学ぶ! おむつフィッターの新発見と介護への応用。外国からの介護従事者に配慮し、分からないことを聞き合える環境作りの実践。おむつ外しは問題行動ではなく自分たちのケアに対する反応として、残尿測定を行い排尿パターンを把握しスキンケアを行うなかで一時的につなぎ寝間着を解除できた実践。どれも聴きごたえのあるもので、会場からは、「年々発表が深く、素晴らしいものになっている」という感想を多数いただきました。各賞については、別紙資料をご参照いただきますよう、お願い申し上げます。


講演は「回復って何だろうーむつき庵のこと、自分のことを通して考えたことー」と題して株式会社はいせつ総合研究所排泄用具の情報館むつき庵代表の浜田きよ子がお話しいたしました。今年21歳を迎えたむつき庵の活動のご紹介とともに、ケアを考えるきっかけとなった母の介護と死への鎮痛の想い、誰もが「健やかに生きる」だけではなく、「健やかに亡くなる」これも大事な事だと気づきました。身体が不自由になった人が主体となって使える用具とのかかわり、排泄ケアについて専門性の在り様によっては見方が変わること、排泄ケアは個別でしかなくその人の暮らしと言うトータルな視点の大切さをお話ししました。「回復って何だろう」について「疾患-細胞・組織・器官レベルでの失調の現れ」「病―能力の喪失や機能不全をめぐる人間的経験」と疾患と病いを分けて考えることの意味を説明しました。重い糖尿病の母が人工透析を言われたが、本人の思い・希望、自分で決定するとういうけれど母は選ばなかったのでは? 病院と言う空間では治療優先が当然だが患者はその先の暮らしを思う。こうした見方の基本に『環世界』―それぞれの主体が環境のなかの諸物に意味を与えて構築している世界のこと、それぞれの生き物の世界があることについて説明しました。目が不自由な母の環世界は、わたしの環世界と同じであり、異なるのだろう。母が医療者からの視点だけでなく、これからの母の在り様が、いくらかは生きるにたるものとして思えればよかったのかもしれない。パトリシアベナーの「たとえ疾患によって身体化した知性が損なわれ、これまでの生活はもはや不可能としても、そうした状況を受け入れたうえで、そのなかでも可能なことがらを見出すことができれば、新たな関心が立ち上がり、背景的意味も組み変わって、生きる意味が再建される。」とケアの本質について述べました。おむつフィッターの存在は「その人の暮らし全体から、ケアを提案できる人」、そして「回復とは、欠けたものを取り戻そう、埋めようとするのではなく、おそらく暮らし全体を再構築していくことが大切。それは医療者のみならず、患者(利用者)との協働作業です」と話しました


特別報告「能登半島地震被災地支援活動報告」について三和薬品株式会社 代表取締役社長 むつき庵認定講師  仲野智彦さんがお話ししました。能登半島地震から10か月以上が経過した今なお、多くの地域で復興支援が立ち遅れ、深刻な状況が続いています。むつき庵はおむつフィッター北陸ネットワークを通して支援の活動を進めています。震災直後の1月4日から現地に支援物資を届けて来られ、被災後の状況の変化と支援の無い様の変化について具体的にお話しいただきました。
 おむつフィッター倶楽部は2014年に設立されてこれまで700人を超える方が会員登録され、バリアフリー展や実践報告会などむつき庵の活動を支えています。おむつフィッター倶楽部の活動を楽しいスライドにまとめて報告しました。


 日本医師会赤ひげ大賞はじめ今年度「社会貢献表彰者」を受賞されます市川晋一先生が来賓として秋田からお越し下さりました。実践報告されたお一人お一人に素晴らしいコメントをいただくとともに、参加された皆様に来賓として先生のお元気なご挨拶をいただきました。「へき地で取り組んでいる最先端の医療-医療マース」について丁寧にお話しいただきました。
 この会に集ってくださいましたお一人おひとりが、介護とは介護される方と介護する方の間にあるもの、介護される方に真摯に向き合い、多職種が連携し合って、ケアの有り様について気づきを分かち合う、人と地域のつながりと、これからの課題を見出せたように思います。


 このように、充実した集いの場を設けることができましたのは、企業・団体様をはじめ、多くの皆様からの温かいご支援の賜物です。心から御礼を申し上げます。第15回むつき庵はいせつケア実践報告会は2025年10月下旬京都での開催を予定しています。どうぞこれからも、ご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

第14回むつき庵はいせつケア各賞

第14回むつき庵はいせつケア大賞
独居男性の夜間における排泄ケアの取り組み
~布パンツ導入がもたらした心豊かな暮らし~
医療法人結 結ファミリークリニック内 ミニむつき庵 楽桃 看護師
丹羽 幸貴実 さん

第14回むつき庵はいせつケア特別賞
病をもつ者の立場から学んだ介護の本質
特別養護老人ホーム くすのき苑 介護福祉士
光野 智美 さん
(代理報告者)石丸明美さん 近藤充子さん 岩﨑淳子さん

第14回むつき庵はいせつケア その人が望む暮らしを支え ともに過ごす 実践優秀賞
その人が望む暮らしや排せつケアとは・・・
社会福祉法人いこま福祉会 かざぐるま 福祉ホームおかりなの家 中西 真央 さん

第14回むつき庵はいせつケア 心地良い身体へとつながるケア 実践奨励賞
排泄によるトラブル改善に向けて~両面吸収シートの併用~
精神科老年期病棟 看護師 寺岡 万智子 さん

第14回むつき庵はいせつケア 看護師として 母として 排泄ケアに取り組む実践奨励賞
赤ちゃんの動きから学ぶ! おむつフィッターの新発見と介護への応用
看護師 むつき庵認定講師 池松 智子 さん

第14回むつき庵はいせつケア 外国からの介護従事者へのサポート実践優秀賞
排泄ケアの困りごと?
特別養護老人ホーム西山寮 介護職 山本 久美子 さん

第14回むつき庵はいせつケア 個別的ケアへの推進奨励賞
患者と看護師間の要求の相違
~おむつ外しは問題行動ではなく自分たちのケアに対する反応~
医療法人協和会 千里中央病院 看護師 島田 麗華 さん