グッドデザイン2013受賞会場より

2013年グッドデザイン賞受賞

むつき庵は2013年に設立10周年を迎えました、この記念すべき年にグッドデザイン賞を受賞することができました。「ユニット11 生活領域・コミュニケーションと仕組みのデザイン」部門での受賞ですが、以下が審査員からの評価コメントです。

「排泄という行為は日常では隠されているが、確実に存在している。そして生涯に渡って自力で行える保証はない。いつか、誰かにケアしてもらうことになった時、本人や介護者がどう向き合ったらいいのか。
そんな悩み解決のために存在しているのが、『むつき庵』である。暮らしの場である民家を展示場として、医療と連携しながら相談を受けている。更に、本人と介護者の生活向上に繋がる器具の紹介、排泄ケアを広く実践するために『おむつフィッター研修』を開催している。
情報発信の根底には『老いても病を得ても豊かに生きる』というコンセプトがある。これまで避けられ明言されることの少なかった排泄という分野への取り組みは、社会問題と真摯に向き合うプロジェクトとして高く評価できる。」

私たちの活動の意義をしっかりと理解し汲み取ってくださった内容で、このような評価をいただけたことは大変嬉しかったです。この場所を10年続けることができ、グッドデザイン賞を受賞できたのは、様々なかたちで関わり、お付き合いくださっている皆様のおかげです。そのことに心よりお礼を申しあげます。
「老いても病を得ても豊かに生きる」という私たちのコンセプト、この実現のためにこれからも精進を重ねてまいります。どうか今後ともよろしくお付き合いくださいますよう、お願いいたします。

㈱はいせつ総合研究所 排泄用具の情報館むつき庵
代表 浜田 きよ子
受賞対象の詳細

デザインについて

「身体・人間」の視点からみて、応募対象が提供できること
排泄ケアの質を高めることで不必要なおむつの使用が低減し、被介護者の身体は動きやすくなります。また皮膚トラブルも軽減します。なにより被介護者にとっては気持ちの良い身体となります。介護者は心身の疲労がとれ、介護負担が軽減します。洗濯物が減ったり、排泄物の処理などが少なくなり、精神的、身体的な負担を大きく減らします。

おむつフィッター研修「生活」の視点からみて、応募対象が提供できること
適切な排泄ケアは、しっかり食べること、気持ちよく出すことを実現するものです。排泄は食べることやトイレまで移動すること、衣服の着脱、便器に座ることなど様々な行為や動作にかかわるものです。よりよい排泄ケアが実現すれば生活自体が大きく変わり、被介護者や介護者の生活への意欲や気持ちも変化します。

「産業」の視点からみて、応募対象が提供できること
排泄ケアは排泄器官だけを見るのではなく、排泄動作など暮らし全体から考えていかなければならないものです。しかし、例えば紙おむつメーカーは自社製品や競合他社の製品のことには精通していても、他の排泄用具や排泄動作などにはあまり詳しくありません。多くの排泄用具を展示し試せる場所を提供することは、製品開発にも寄与していると言えます。

「社会・環境」の視点からみて、応募対象が提供できること
おむつフィッター研修を修了した有志が「ミニむつき庵」という排泄ケアの相談場所を開設しています。現在全国に21ヵ所あり、地域で用具を展示し排泄の相談を受けており、地域の集いの場にもなっています。また研修修了生は地域や職場で勉強会を行っています。排泄ケア向上に伴いおむつが不要になることも多く、そのことは資源を守り、使用済みおむつの焼却コストを軽減します。

ユーザー・社会に伝えたいこと

気持ちのよい排泄のためには、広い視点と様々な専門性が必要です。また排泄はその人なりのこだわりや地域特性などもあり、決まった正しい答えがあるものではありません。このデザインを通して 私たちは様々な地域とのつながりや、専門職種との連携を図り、 私たちの得たものをしっかりと高齢化した社会に発信します。私たちの活動が、「老いても病を得ても豊かに生きる」ことへの一助になれば、と願っています。
第3回実践報告会

審査委員の評価

排泄という行為は日常では隠されているが、確実に存在している。そして生涯に渡って自力で行える保証はない。いつか、誰かにケアしてもらうことになった時、本人や介護者がどう向き合ったらいいのか。
そんな悩み解決のために存在しているのが『むつき庵』である。暮らしの場である民家を展示場として、医療と連携しながら相談を受けている。更に、本人と介護者の生活向上に繋がる器具の紹介、排泄のケアを広く伝え実践するために『おむつフィッター研修』を開催している。
情報発信の根底には『老いても病を得ても豊かに生きる』というコンセプトがある。これまで避けられ明言されることの少なかった排泄という分野への取り組みは、社会問題と真摯に向き合うプロジェクトとして高く評価できる。

担当審査委員| 暦本 純一氏 (ユニット長) 江渡 浩一郎氏 中村 勇吾氏 日高 一樹氏