『第13回むつき庵はいせつケア実践報告会』ご参加ありがとうございました

『第13回むつき庵はいせつケア実践報告会』ご参加ありがとうございました

9月30日(土)ラボール京都2階ホールにて、「第13回むつき庵はいせつケア実践報告会」を開催しました。まだまだコロナ禍の先行きは見えませんが、丁寧な感染対策をとって開催することが出来ました。当日の参加者は講演・報告者スタッフも含めまして総勢91名の方々がお越しくださいました。

はいせつケア大賞には「精神科スーパー救急病棟内における排泄ケア環境の改善に向けて」と題して発表されました精神科スーパー救急病棟看護師飯塚美代子さんが受賞されました。精神科だからおむつの装着・拘束それを当たり前とはせず、精神科だからこその視点が必要と考え現状を変えていこうとしたこと、そのためには患者だけでなくそこに関わるスタッフをもみられたこと、患者の尊厳を守るアプローチをいろいろな点から提案し 環境作りをされていること、言葉にすれば簡単ですがとても大変な道のりです。患者にとっての当たり前をも念頭に 排泄ケア環境の改善を図るこの素晴らしい取り組みに対して最も高い評価が贈られました。

発表された7組のいずれの実践報告も素晴らしく、回を重ねるごとに発表される内容のレベルが向上していますことをあらためて実感するものです。来所での相談にとどまらず 多職種がチームとなり自宅を訪問する、それにより本人の思いにも深く触れ合われた実践。困っていることを本人や家族に聴いてみる、理解してもらえるよう伝え方を工夫する、出会えた人と丁寧に向き合われた実践。慢性的な介護職員の不足・コロナ感染蔓延等により 職員優先のケアがなされている、その状況を危惧され基本に立ち返るべく排泄用具を含め施設流・自己流になりがちな排泄ケアの見直しを図られた実践。一人ひとりの状態を細やかに見つめ困りごとの原因を探りその方の特徴を理解しながらより良い用具や方法を見出していく、本人にとってどうなのかという視点をもっての取り組み。他者を知ることは容易ではありません、他者を理解したように思いがちです、認知症を抱えた母親の現在のみならず過去を丁寧に知るなかで母親と娘の関係も変わりそこから支援者の気付きをも得た取り組み。一日何度も着替えが必要な患者に対してリハビリでトイレ誘導を開始したことで本人の意欲も向上し周囲の人たちとの関係も変化しそこからケアの見直しに繋がっていく、排泄が変われば暮らしが変わるその好転をつくった実践。どれも聴きごたえのあるもので、会場からは、「年々発表が深く、素晴らしいものになっている」という感想を多数いただきました。

ご講演はふれあい歯科ごとう代表・新宿食支援研究会代表の五島朋幸先生に「死ぬまで噛んで食べる~最期まで食べられる街づくり~」と題してお話ししていただき、参加者の皆様に大きな学びと共感をいただきました。五島朋幸先生は訪問歯科診療をはじめ東京都新宿区を拠点に新宿食支援研究会代表として活動されています。食べることの意味、食と免疫、美味しさとは、嚥下機能等についてわかりやすくお話しされました。最期まで口から食べる、そんな当たり前のことが難しい現代日本。しっかり食べられる口づくりはもちろん、他職種との連携で食べられるようになる方もいます。そんな地域食支援の拠点として私たちは存在したい、あらゆる手法を用いて口から食べることをサポートしていきますと熱く語られました。

おむつフィッター倶楽部は2014年に設立されて現在330人を超える方が会員更新・登録され、バリアフリー展や実践報告会などむつき庵の活動を支えて下さっています。世話人の岡崎さんのご挨拶で、おむつフィッター倶楽部の活動を楽しい動画にまとめて上映しました。

日本医師会赤ひげ大賞を受賞されました市川晋一先生が来賓として秋田からお越し下さりました。実践報告されたお一人お一人に素晴らしいコメントをいただくとともに、参加された皆様に来賓として先生のお元気なご挨拶をいただきました。

特別ゲストとしてアカペラグループのINSPIリードボーカルの奥村伸二さんの美しい歌声を披露していただきました。

この会に集ってくださいましたお一人おひとりが、介護とは介護される方と介護する方の間にあるもの、介護される方に真摯に向き合い、多職種が連携し合って、ケアの有り様について気づきを分かち合う、人と地域のつながりと、これからの課題を見出せたように思います。
最後におむつフィッター倶楽部世話人代表の小林貴代さんが閉会のあいさつをされ、恒例となりましたお楽しみ抽選会を行い和やかなうちに終えることが出来ました。

「第14回むつき庵はいせつケア実践報告会」は来年2024年11月初旬の開催を予定しています。楽しく充実した中身を準備していきたいと思います。来年もよろしくお願いいたします。
なお、当初YouTube「むつき庵チャンネル」動画配信を予定していましたが取りやめとなりました。大変申し訳ございません。

第13回むつき庵はいせつケア各賞

第13回むつき庵はいせつケア大賞
「精神科スーパー救急病棟内における排泄ケア環境の改善に向けて」
精神科スーパー救急病棟看護師 飯塚 美代子さん

第13回むつき庵はいせつケア
本人の思いに触れる多職種での支援優秀賞
「福祉用具からみた排せつケアと尊厳~男だから立っておしっこをしたいんだ~」
社会福祉法人名古屋市総合リハビリテーション事業団なごや福祉用具プラザ 日髙 明子さん
第13回むつき庵はいせつケア
 介護のある暮らしを支える居場所を築く 実践奨励賞
「在宅で気持ちよく過ごすためにできること」
在宅医療・介護連携相談支援室 看護師 岩佐 ミユキさん
第13回むつき庵はいせつケア
考える 情熱をもつ それが快適さにつながる実践優秀賞
「情熱を取り戻すことと、排泄スキル向上による成果」
特別養護老人ホーム大垣市くすのき苑 石丸 明美さん
第13回むつき庵はいせつケア
穏やかな時を支える真摯なケア 実践優秀賞
「よりよい排泄ケアをめざして」
訪医療法人山西会 宝塚三田病院 准看護師 木下 孝子さん
第13回むつき庵はいせつケア
過去・現在・未来を知ることに着目した尊厳ある排せつケア実現優秀賞
「尊厳のある排泄を目指して~その人らしさにこだわった人生の振り返り~」
甲賀市水口医療介護センター介護老人保健施設ケアセンターささゆり
介護福祉士 服部 直子さん、看護師 今村 知恵さん、看護師 福山 由美子さん
第13回むつき庵はいせつケア
リハビリから、排泄ケアを変えたで賞
「『やっかいな人』から『頑張った人』へ~おむつを変えるリハビリの関わりかたの一例~」
大津赤十字志賀病院 作業療法士 山本 朋子さん

第13回むつき庵はいせつケア実践報告会にようこそ

株式会社はいせつ総合研究所   排泄用具の情報館 むつき庵
代表 浜田 きよ子

むつき庵は今年11月開設20周年を迎えます。排泄についての相談をしたい。そのためにも多くの展示品がある場所を開きたい。そんな思いだけで設立して、あっという間に20年が経ちました。
「おむつから尿が漏れて困る」「おむつを自分で外してしまう。外せないおむつは無いのか」など、さまざまな相談を受けるなかで、そのような現象が起こる原因を探ることが大切だと実感しました。皮膚が痒くて掻いてしまうために漏れが起こるなら、皮膚トラブルの原因を探らなければなりません。おむつの当て方がよくないことも考えられます。排尿量や水分摂取量によっても必要なおむつは変わります。そもそもおむつを使用する以外に方法はないのでしょうか。
そんな思いから、暮らし全体から排泄ケアを考えていく研修を始めました。これがおむつフィッター研修です。誰でも自分の専門知識、あるいは知っていること、そこから原因を探ります。確かに医療職の視点、介護職の視点、福祉用具専門相談員の視点は同じではありません。だからこそ、さまざまな職種の方々がともに学び合う場こそが重要だと気づき、誰でもが参加できる研修としました。なぜなら排泄は食事や運動、薬、疾病、習慣など、暮らし全体に関わることだからです。
現在3級修了生はおよそ9400人。稚内から西表島まで全国から研修に参加しています。私たちはその方々からも学びを深めていきました。そして論文を通して、多くの方に知っていただきたい実践に気づきました。そこから実践報告会が誕生したのです。
ケアが必要になった人の心身が損なわれない排泄ケア、もちろんケアをする方の心身を守る排泄ケア、そんなケアを多くの方々とともに、これからも模索し、広げていきたいと思います。
何より、今日一日は、久しぶりに会われた方々とのよい時間になり、また新たな出会いや気づきになればとても嬉しいです。今日はお越しくださり、本当に有難うございます。